| 第5回  初コンタクトは美人の女土木作業員……。 「ドウゾ!」と案内されたクルマはヒンドスタンのセダンである。
 初めて乗るクルマだ。シンプルもいいところだ。余計なものは一切なし。
 大昔のモーリスを彷彿させるクルマでホテルまで送り届けるという。
ビニールのシートがペタペタと身体に張り付く。
 空港を出ると、外は夕焼け。夕日を受けたオレンジ色のサリーを纏った女が頭に大きなザルを載せて歩いていた。サリーが透けて、足やお尻の線がくっきりと見えた。
 なるほど、これがインドの風景ね。なかなかの美人の出迎えだ……。
 そんなつもりになったのだが、その女は裸足。
 しかし、そのプロポーション、アーリア人の血筋を受け継いだ顔立ちはかなりのもの。日本なら、そのままトップモデルとして通用するのでは……。
 だけど、長年にわたって裸足の生活をしている女の足は指が大地を踏ん張り続けたために、並みはずれた大きさだった。
 因みに、オレンジはインドで幸運の色とされているのだ。
「なるほど、これがカースト制度のなせる技か」と、その時、思ったのだ。
 道路には処構わず牛がいるし、そこら中に牛糞がばら撒かれている。ニューデリー市内に近づくとクルマが増え、人が増えた。牛の増えた。
 渋滞が始まり、かつてNHKのテレビで観たインドが目の前に展開されたのである。
 ホテルに到着した。で部屋に案内されると、あとは夕食。それまで、やることがない。一階のバーでビールを飲んで時間を潰した。
 出されたのは東南アジアのタイガービールだった。
 夕食。それはごく普通のホテルの定食だった。インドの香りは微塵もない。
 翌朝、朝食前にホテルの外に出た。
 するとどうだ。早起きのインド人がホテルの前で待ち構えている。
 「案内スル……」
 「がいどスル……」
 そういう輩が、まとわりついて、離れない。
 ちらりと見た街角には修行僧なのか哲学者なのか、それとも……。
 朝から瞑想にふけっている髪の毛、髭が伸び放題で、多分、一枚の布であろう、それを身体に巻きつけた、それともの人間が目立っていた。
 インドの写真集などで見かける、あの姿である。ところが彼らにカメラを向けると、黙って手を出し、いくばくかの金を要求する。だから、彼らの写真はない。
 のんびりとデリーを散策することは失敗に終わったのである。
 その日の午後、イスラエルからの本隊がコルカタ経由でデリーの国内空港に到着するという。
 彼らと合流しなければならない。荷物をまとめてホテルをチェックアウト。
 国内空港で合流してから、バスで移動。
 大きくて立派なホテルに連れていかれ、インドの香りムンムンの昼食は豪華な食事だった。
 
 <続く>
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